ペアリングワイン

ニュージーランドワインに学ぶサスティナブルな生き方

“SDGs”や“サスティナブル”など、今まで聞いたこともなかった言葉が日常的に聞かれるようになったのは、ここ1,2年のことですね。日本でもエコバックが普及し、少しずつ環境保護の動きが広がりつつありますよね。

今回は、いつもより少しまじめな内容ですが、地球に優しい選択・そして地球に優しいワインについてご紹介します。読み終わったあとに、少しでも皆さんの考え方が変わるきっかけになれば嬉しいです。

サスティナブル選択とは

「サスティナブル」を最近よく耳にするけど、実際のところ何のことかよく分かっていない。そんな方も多いのではないでしょうか?

サスティナブルとは、英語で「持続可能な、持ち堪えられる」という意味をもつ言葉です。例えば、水力・風力・太陽光など化学燃料に頼らないエネルギー源を“サスティナブル・エナジー”といい、生産者の生活と自然環境に配慮して作られるコーヒーを“サステイナブルコーヒー”といいます。

では、何のために「持続可能」な選択や行動をする必要があるのでしょうか?それは、気候変動や環境破壊によって生きる場所をなくす動植物(もちろん人間も含みます)たちを守るため。サスティナブルとは、環境だけではなく地球に生きるすべてのものを持続可能にするための選択や行動に対して使われる言葉です。

農業が地球に与える影響

では、ワインとサスティナブルはどんな関係があるのか?オーガニックワインやナチュールワインなど、「自然派ワイン」という言葉を聞かれたことがあると思います。

オーガニックや自然派ワインは基本的に、科学的物質を使わず有機栽培でつくられるワインのことです(各国定義があり、ビオデナミ農法などはオーガニックとは異なる特定の定義があります)。

ではなぜ、科学的な物質を使わないのか?それは、除草剤や殺虫剤などの農薬には土壌汚染を起こすリスクがあると考えられているためです。畑にまかれた農薬は土壌だけでなく、やがて川や海へと流れていきます。農薬に含まれる化学成分によって命を奪われる動植物がいるため、自然派のワインは有機肥料のみを使います。

また、ブドウ畑をはじめ農業は、元々森林だった場所を開拓するため、二酸化炭素を吸収する森林そのものを奪ってしまうことになるので大きな負担だと考えられています。

畑を耕し・収穫をするために使う機材から排出される二酸化炭素もまた、大気汚染へと繋がっていきます。そして、世界全体の人口増加(日本では人口減少が問題ですが)と並行して食料確保のためにさらに農地を切りひらいていかないといけません。それはワインをはじめとする、嗜好品も例外ではありません。

Bio Gro

そんな全世界的に直面している環境問題にワイン産業はどう立ち向かっているのか?ここでは、ニュージーランドの例をご紹介します。ニュージーランドは2019年からビニール袋の使用禁止を徹底するなど、ECOや環境保護に力を入れている国のひとつです。

Bio Groは、1941年にニュージーランドで発端した世界で最も古い有機組織の1つ。厳しい審査を3年間クリアしたのちに認証を受けることができます。

基準は非常に厳しく、農薬や合成肥料を使わないことはもちろん、ご紹介する8つのポリシーをもとに気候変動や動植物への配慮、そこで働く人間の人権侵害まで細かい基準が設定されています。

【Bio Groが掲げる8つのポリシー】

①トレーサビリティ:
すべての認証済み製品はその原産地までさかのぼることができる。

②動物福祉:
ストレスや病気を軽減する十分なスペースを備え、遺伝子組み換え生物を含まないできるだけ自然な食事を与える。(主に畜産業)

③気候変動:
自然と協力してクリーンなグリーン ニュージーランドを維持するために取り組む。合成殺虫剤や肥料をしようしないことで水や土壌の汚染大幅削減を目指す。

④生物多様性:
有機農場は生物が集まる場としても認められる場所である。

⑤包装:
環境への影響を最小限に抑えること。リサイクル素材の活用。

⑥人権侵害:
人権侵害を許可しない。

⑦健康と幸福:
遺伝子組み換えを一切行わない。合成着色料、保存料、添加物は一切使用しない。

⑧広告:
「グリーンウォッシング」マークを使用することでオーガニック認証を証明することができる。

具体的に、Bio Groの認証を受ける多くのワイナリーではワイナリー周辺に森林を再生させるなど周辺環境や生態を変えないよう努力をしています。

今、わたしたちにできること

環境保護が大切だとは知っているけど、結局なにから始めればいいのか分からないので、今と変わらない生活に戻ってしまう。全てをオーガニックに切り替えると値段は高くつくし、気が重くなって続かない。それが本音ではないでしょうか?もちろん、私自身もそうでした。

そんな時は、月に1回、2週に1回、週に1回と少しずつ日常にエコを取り入れてみる。自分の意識の範囲ではじめてみることをおすすめします。そうすると、だんだんと着るものや生活雑貨など身の回りのものに対しても不思議と「これは地球に優しいのかな?」という疑問が持てるようになってくるものです。

そして、今私たちがすぐできることは“その製品ができるまでに自然に対してどんな影響があるのか想像し、“無駄に消費をせず、しっかりものを選ぶこと”ではないでしょうか?

おすすめBio Gro ワイン

少しでも「地球に優しい選択」に興味を持っていただいた方へ。先述したニュージーランドBio Gro認定のワインをご紹介します。

▶︎ミルトン ヴィンヤーズ シャルドネ オポウ ヴィンヤード

・原産国:ニュージーランド
・産地:ギズボーン / 北島
・品種:シャルドネ
・容量:750ml

ミルトンヴィンヤードは、1989年に初めてBio Gro認証を初めて受けたワイナリーです。1985年創業なので、創業当初より既にビオデナミ農法をはじめとするオーガニック栽培に注力してきたことがわかります。小規模なワイナリーですが、国内でもビオワインのパイオニア的存在として知られています。

(ワインの特徴)
香りは白桃やアプリコットなど熟した果実、蜂蜜のような甘美さを感じます。オーク感やナッツのニュアンスもありますが、心地よい酸が余韻まで続くので全体的にキレイめに仕上がっています。カマンベールチーズなどと相性抜群です!

▶︎セレシン・エステイト レア ピノ・ノワール

セレシン・エステートはハリーポッターシリーズの映画監督でも知られるマイケル・セレシンがオーナーを務めるワイナリー。2000年にBio Gro認証を受けています。認定から15年以上経過しているワイナリーは5つのみ。その後の厳しい審査もクリアしているニュージーランドを代表するオーガニックワイナリーのひとつです。

・原産国:ニュージーランド
・産地:マールボーロ / 南島
・品種:ピノ・ノワール
・容量:750ml

(ワインの特徴)
熟したプラムのようなプルーンのような成熟した果実の香り。このヴィンテージは少し枯れた落ち葉などのニュアンスも感じられます。やわらかいタンニンと酸のバランスが良く、少し熟成したピノ・ノワールがお好きな方へ是非おすすめです!ドライフルーツと一緒に頂きたい1本です。

最後に

今回は、いつもより少しだけまじめな内容をお伝えしました。私自身も、ニュージーランドで生活をする前は「オーガニックやエコってなんとなくブームになっている話」程度にしか感じていませんでした。しかし、一度考え方を変えると身の回りにあるものや環境に対していろいろな疑問が浮かんできます。

次回、ワインを買うときに少しでも「地球に優しい選択」について考えるきっかけとなれば嬉しいです!

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地球に優しい選択。おすすめサスティナブルワイン

高橋 宗子

【お家で楽しむワイン提案のワインエキスパート】
ニュージーランドワイン好きが高じて、ワイナリー・ブドウ畑巡りをする為ニュージーランドへ移住。
都内ワインインポーターにて星付きレストランにもワイン紹介をしてきた経験を活かし「お家でも気軽に楽しめるワイン時間」を提案しています。 高橋 宗子の記事一覧 

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